学習内容が頭に残りやすくなるノート指導術
ノートの指導法を知らない学校の先生が多いです。
特に日本の教育では、生徒に板書をそのままノートに写させて、満足する場合が大半だと思われます。
しかし、”前回の記事“のように単に板書を写しても学習内容が頭に残りにくいことは教育心理学の分野では言われています。
では、具体的にどのようにノート指導をすればいいのでしょうか?
今回は、先生や親が、子どもにどのようなノート指導をすれば良いのかを教育心理学のエビデンスをもとに、解説します。
目次
①具体的なノート指導の例
子どもの学習内容の定着に結びつかない、ダメなノート指導例はいくつかあります。
それは、
- 単に板書をノートに写すだけ。
- 強調部分が多かったり、無駄にカラフルにノートを装飾させたりして、学習内容のどこが重要かわからない。
などが挙げられます。
では、教育心理学的に良いノートの指導法とは何か?
それを調べたのが、台湾の国立中央大学のChangとKuが2015年に発表した研究です。
(※これからご紹介する図は筆者がChangとKuの論文の数値を参考に作成しています)
彼らは小学生を対象にノート指導を行い、ノート指導後のテストでその効果を調べています。
研究の流れとしてはかなり単純です。
1) 25分間で記事を読み、割り当てられた群に沿ってノートを取っていく。
2) ノート指導群は、ここで学習に効果的なノート指導を受ける。
3) 2~3週間後に、学習内容に関する選択式のテストを受ける。
そして、1)で割り当てられる群は、三つの群があります。
一つ目の群は、25分間のリーディング中にノートを取ってもOKで、ノート指導を2)で受ける「ノート指導群」。
二つ目の群は、25分間のリーディング中にノートを取ってはいけないが、2)でノートの指導は受けず、その後の授業では自由にノートを取ってもいい「ノート指導なし群」。
三つ目の群は、25分間のリーディング中にノートはとってもOKだが、2)でノート指導を受けず、その後の授業で自分の頭に浮かんだことをノートに取らせる「思いつき群」。
この三つの群を比べることで、ノート指導の効果を調べています。
では、どのようなノート指導をしたのか?
5つの教訓を教える形でノート指導が行われています。
その5つの教訓とは、以下のものです。
①学習内容の大事なところを強調する:下線の引き方や大事な所をマークする方法を知る。
②パラグラフごとで情報量を減らす:いらない情報や些細な情報を削って情報を選択する。
③キーワードを特定する。
④視覚的にわかりやすいように情報を整理する:アイコンや図にしたりして、分かりやすく整理する。
⑤テキストの構造に気を配る:読むテキストの構造を分析し、何がメインテーマなのか、何がサブテーマなのか、何が結論なのか、などを分類する。
この5つの教訓に沿った指導を行うことで、リーディング後の授業ノートをより洗練させていきます。
この「ノート指導群」と「ノート指導なし群」と「思いつき群」で、その後のテストの成績はどうなったのでしょうか?
②ノート指導によって期待される効果
ノート指導によるテスト成績の違いは以下のようになりました。
縦軸が、選択式の問題の正答率です。
横軸が、それぞれの群を表しています。
すると、ノート指導群は他の二群と比べて成績が高いことがわかります。
なお、ノート指導なし群と思いつき群では、成績に有意な違いはあるとは言えませんでした。
この結果より、ちゃんとしたノート指導が行われなければ、ノートをちゃんと取っていない人とあまり勉強成績は変わらないということが分かります。
しかし、ちゃんとしたノート指導を行えば、ノート指導を受けていな人より勉強成績が高くなります。
先生や親によるノート指導は、かなり重要です。
次の図は、各群によって「25分間のリーディング前の授業ノート」と「テスト後の授業ノート」を比較した結果です。
こちらは、リーディング前とテスト後で、授業ノート全体で板書の内容を、そのまま写した割合の多さを表しています。
板書を単に写すだけではノートの勉強成績への効果は薄いです。
そのため、この割合が高ければ、ダメなノートの可能性が高いです。
縦軸が、板書をそのまま写した割合の多さです。
横軸の左側がリーディング前の授業ノートで、右側がテスト後の授業ノートです。
青がノート指導群、オレンジがノート指導なし群、ねずみ色が思いつき群です。
すると、ノート指導群では有意に記事の丸写しの割合が少なく、受けたノート指導によってノートが改善していると言えます。
一方、ノート指導なし群と思いつき群では、単なる丸写しが減っていません。
そのため、ノート指導群はノートが改善され、さらに他の二群と比べてテストの成績も高いと言えます。
③まとめ
以上より、
- 適切なノート指導を受けると生徒のノートは改善され、勉強成績も上がる。
- ノート指導のポイントは、学習内容の大事なところの強調・いらない情報を減らす・キーワードの特定・視覚的にわかりやすいように情報を整理・テキストの構造を把握の5つ。
- 板書をそのまま丸写しのノートは勉強成績向上への効果は薄い。
これまで教育現場では、ノート指導自体にあまり注目されてきていませんでした。
単に板書を正確に写すように言われるだけで、それが勉強成績に結びついているかはわかりませんでした。
しかし、ノートの取り方一つで勉強成績は向上します。
そんな個別の指導ができるのは「かてきょの森」の良いとろです。
子ども一人一人に気を配れますので、子どものノート指導で足りないところを補えます。
ぜひ下記のリンクをクリックして、お気軽に試してみてください。
参考文献
Chang & Ku. (2015). The Effects of Note-Taking Skills Instruction on Elementary Student’s Reading. The Journal of Educational Research, 108, 278-291.